木の家具って生きてる?死んでる?赤太と白太のおはなし

木は切り分けられ方(さばかれ方)によって表情や扱いが変わるというおはなしが前回。
つづいて板目(タケノコ模様)と柾目(きれいな直線)の『扱い』のおはなしの前に、

そもそも、切った、捌いた、言葉づかいが乱暴ですよね….。

ここで、切られて材料となった木は生きているか、死んでいるか、ということを
4部構成、10分くらいの読み物で挟みます。
※あくまで主観ですのでいろいろな意見があると思います。

1.木の家具や雑貨や小物って生きてる?死んでる?
2.生きた木を切り細胞が死んでいる部分を使う。(細胞の死?個体の死?)
3.『木は呼吸をしている』か?(塗装のはなし)
4.ひとことで言えば『いただきます。』


<辻宅:杉テーブルの赤田と白田>


<豊中さん作:ナチュラルエッヂの器の赤太と白太>

 

1.木の家具や雑貨や小物って生きてる?死んでる?


わたしは『死んでいる』と思っています。
訓練校時代の先生も(吐き捨てるように笑)同じ事をおっしゃっていました。

理由の一つに、木を細胞で考える必要があります。
家具や木で、色の濃い部分と薄い部分が大きく違うものを見た事があるとおもいます。
(年輪でなく、赤茶色っぽい部分と、白い部分)

■芯に近い、赤っぽい部分は生物学的に細胞が死んで硬化しています。
□樹皮に白っぽい部分は切られた時点、細胞が生きていて成長過程にあった部分。

例えば、家具を見たとき、
1枚板のテーブルなどは、外側のフチの部分が白っぽかったりします。
なぜなら丸太をできるだけ大きく板でとろうとすると、必ずこの部分が左右に入ります。
(※何枚かを合わせてつくられたテーブル天板などは逆にこれを落とします。)

ですが、家具や小物を作る際、この樹皮に白い部分は、虫がついたり、強度がふにゃふにゃだったり、
狂い(ねじれ)やすかったり、欠点が多いので、切り落とす事がほとんどです。

つまり、白い部分はものづくりや加工に適しません。
(お皿やお盆などはこのねじれを自然の味とする場合があります。)
特集:ナチュラルエッヂの器のできるまで

ですから、『製品』となるものには死んだ細胞=赤太が使われます。
(白い木もあるので、かならずしも赤太=赤いわけではありません。)

2.生きた木を切り細胞が死んでいる部分を使う。(細胞の死?個体の死?)


おもしろいことに、木は、捌き方などがあっても、
マグロとちがって、脂身の乗った部分や、筋肉質の部分、などの分け方でなく、
そもそも細胞が死んでいる部分を使いたい。ということ。


<苔まで生えても雄々しく育つ木:河内長野>

同じく例えていいのかわかりませんが、

■マグロは絞めた時点で、細胞も個体も死となります
□木は切っても株からまた新芽が芽吹きます。ですが、頂きたい部分の細胞は既に死んでいる。
(※切られる時期、場所などにもよるそうです。)

浅い知識ですが、信州、加賀、越後の山には『木地師』と呼ばれる職人がおり、
時期により山から山へ時期で移る、現代で言えばノマド、少し昔で言えばジプシーがおったそうな。
「今の時期、こいつ(木)なら切っても、何年後に元気にまた育つし、森も育つ。」と見定めた木を切り、
碗や盆などの木工品を加工し、次の里山へ移ることを生業とする人たち。

かっこよく、憧れます。ではウールではOK?象牙はOK?痛みは?と聞かれると、
細胞の死と、個体の死を意識しなければならないので、思想や文化に差が出てくるところだと思います。

3.『木は呼吸をしている』か?


現代の木目を活かした(ペンキなどは除いた)塗装には大きく分けて、
ウレタン塗装とオイルフィニッシュがあります。

ウレタン塗装

ウレタン塗装のイメージは肉厚のサランラップ。
光沢がありつるつる。美しいものを美しいままで。

○メリット
汚れにも水にもつよい。
木の狂いも少ない。

×デメリット
へこみや剥がれの補修が個人ではほぼ不可能。

オイル塗装

オイル塗装のイメージは「かためるテンプル」
油を通導組織に埋め込み、水やこまかな汚れを防止します。
オイルなのでしっとり手に吸い付く感じ。
手の油分などで味わいを増す。

○メリット
へこみや剥がれは個人で修復可能。
植物性で化学物質を(ほとんど?)含まない。

×デメリット
水(輪ジミ)などに弱い。
ウレタンほど狂いに強くない。

主に、こう分けることができます。


<植物性オイル塗装、OSMOの塗料缶で固まった塗料=固めるテンプルっぽい>
最近はオイル塗装が市民権を得てきたため、
「木の呼吸をとめないオイルフィニッシュ」
という言葉を良く聞くようになりました。

ただ、私の考えるところ、木は製品時、死んでいるので、
呼吸はしていません。

極端な話で、
ラッピングされたスポンジか、
水を多少なりともとも吸う(ヘチマのような)スポンジか。

木は呼吸をしている、という部分で、木は生きている。
と聞きますが、

呼吸をしてる=生きているというのと違って、

わたしはどちらかというと、
「木は生きている」というより、
「木のままを活かしている」と言う方がしっくりきます。

4.ひとことで言えば『いただきます。』


細胞の話と個の話がありましたが、
死んでいる部分を使うために、成長していたものを一度切る訳ですから、
ありがたく、いただきます。の一言に尽きると思います。

虫たちは成長部分の白太を好み、
僕たちは死んだ組織の赤太を好み、

虫たちは森を活かすための歯車となるけれど、
僕たちはどんなパーツになれるのかな。
と、赤太と白太について書いてて思いました。


G.Wの今日、大宝木材ご隠居が、することないから。と木を整理してました。
「アルブルスタッフが道具を大事にするでしょ。私にはそれが木なんだよね。」と。
あかん、ご隠居が道具を落とした時のムッと感、伝わっていました。

木も大事に預かり頂きます。

 

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